恋人境界線

活気のある店員の声。
店内には赤字で50%オフと書かれたの大きな紙が何ヶ所にも貼られていて、例外なく混み合っている。

客層は男性や、カップル。あたしはその中に紛れて、小物が置いてある什器を目指して歩いた。


『行くな。ここにいろよ』


寄り添うことが当たり前になると、一人で行動するのが心細いよ。
だなんて。
誰か、こんな心許ないあたしを叱って欲しい。

だけど、その心細さには、もう一つの原因があって。そっちの方があたしにとっては重大な悩みに相当する。

春臣は、あの台風の夜以来、あたしと体を重ねようとしない。
キスは、する。極上な目配せも、もれなく吐息も込みな甘い呼び声も。

だけど、いつも。それでお仕舞い。その先に待っているのは、笑顔でのお別れ。あたしを物足りない気持ちにさせるだけ。

あたしは“どうして”を連呼しながら、本当に聞きたいことは、聞けない。
自分でも情けないくらい滑稽だ、と思った。

本当は一番知りたい。
焦らさないで教えて欲しい。

“どうして、あたしを抱いてくれないの?”
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