恋人境界線

その誘いを真島くんから受けた春臣は、二つ返事で快く乗ったのだとか。

一月四日。
イベントが行われるスキー場へは、レンタルしたマイクロバスで向かう。


「真島、そりとか持ってくんなよ邪魔だよ邪魔」
「スキー場と言ったらそりだろ!邪魔とか言った春臣には絶対貸してやんねーからな」
「いらねーよ。ガキじゃあるまいし」


一番後ろの座席ではしゃぐ春臣たちの声が、車内中に響き渡る。
首を回してちらりと振り返れば、春臣の満面の笑みが見えた。

…あたしの気も知らないで。


「志麻ー、なんか今日バッグでかくない?」
「そっ、そう?」


足元に置いた大きなバッグが、あたしの隣に座る静佳の方にまではみ出していて、あたしは焦って通路側に出した。


「ご、ごめんね」
「まさか家出、とかじゃないよね?バッグ二つも持って」
「まさか!」


小声で言った静佳に間髪入れずに切り返すと、「そ、そう?」不思議そうな顔をされてしまった。

旅行用のバッグはちょっとやりすぎたかな。
スキー場へは日帰りだけど、泊まれる準備もしてきた。
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