恋人境界線
雪祭りといっても、スキー場の駐車場に小規模な出店が出たり、子供が自由に遊べる滑り台が出来ていたり、その程度だ。
サークルメンバーの何人かは、ボードをレンタルしてゲレンデに向かった。
静佳もその一人。
「見ろよ志麻、真島のやつ子供に混ざって並んでる」
春臣が指差した大きな滑り台の脇には、順番を待つ行列ができていて、その中で周りより頭みっつ分くらい抜きん出ている人影が。
「ほんと、勇気あるね。真島く……っわ!」
滑り台の方へ足を一歩踏み出したとき。ブーツが雪に滑って、体が後ろに持ってかれる。「――っと。」寸前で、春臣に両肩を支えられた。
「転ぶなよ?」
「だっ、大丈夫だよ!ありがと…」
さっきからなぜか、妙に意識してしまう。触れられた部分が、いちいちやたら熱くなる。雪山で吹く冬の風は、こんなに冷たく凍えそうなのに。
それに反比例して、あたしの肌、発火しそう。暴走しそうで恐ろしいよ。
「春臣ー!超楽しいぞこれ!」
滑り終えた真島くんが、片手を挙げてこちらに駆け寄って来た。