恋人境界線
笑顔で迎える春臣を横目で見て、男の子って羨ましいな、と思った。
いつの間に仲直りしてるんだろう。わだかまりが残ることなく、まるでなにも無かったかのような、自然な接し方ができて。
あたしには、まだまだ時間が掛かる。それにおそらく、どんなに時間を費やしても、もう元には戻れない。
あたしもいつか薫と、普通に会話できる日がくるのだろうか。
「お帰りー。いい大人がはしゃいでる様がなかなか興味深かったよ」
そりを引いて戻ってきた真島くんを出迎えて、春臣は肩をすくめた。身震いをしたようにも見える。
旅行カバンは、さすがに邪魔になるからバスの中に置いてきた。代わりに持ってきたバッグの中に、念のためにプレゼントの手袋を入れてきたけど。
…今、渡す?
「春臣、寒い?平気?」
「寒い、っつったら志麻が暖めてくれんの?」
真面目な調子で言って、春臣は首を傾げてあたしを窺うと、両手を広げた。
「おい、あんま目の前でいちゃつくなよ」
真島くんの声が、あたしに理性を与えた。