カテキョ。
けれどショウヘイから返ってきた返事は、あたしの予想外の答えだった。

「そっかぁ。ねぇ、知佳……。あのさ、知佳はもう専門学校受かったでしょ?俺は、公務員試験まであと1ヶ月あるんだ。好きになれないのは十分分かってるよ。でもあと1ヶ月だけでいい。一緒に居てほしい。1ヵ月でいいから。お願い。」


同じ受験生の立場として、ショウヘイの気持ちは痛いくらい分かる気がした。

ショウヘイも必死なのだろう。
あたしは、ショウヘイに対する情が湧いてきて、揺るがなかったはずの別れたいという気持ちが揺れた。

あと1ヶ月だけなら、付き合ってもいいかなという甘い気持ちがあたしの心を動かした。

「分かった。あと1ヶ月だけね……。あと1カ月だけだよ。」

「ありがとう。」


電話越しにショウヘイが泣いているのが鼻をすする音で分かった。

本当は昨日、先生にこうやってあたしのことを引きとめて欲しかったと思ったけれど、その気持ちにはそっと蓋をした。
 
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