カテキョ。
ただひとつだけ幸運なことに、あたしはショウヘイに自分の家を教えていなかった。だから知らないふりをしようとした。

あたしはショウヘイに見つからないように自分の部屋の窓から離れた。

そして、一呼吸おいてから平静を装って
「どこの公衆電話にいるの?」

そう聞いた。


「知佳の家の近くの公衆電話の所にいる。確か前、こっちの方って聞いてたから。」

「どうやってきたの?」


あたしの家は、ショウヘイの家から電車を乗り継がなければならないし、1時間以上の距離がある。

中学生の時に北海道から引っ越しをしてきたショウヘイにとって、あたしの家の地域は全く土地勘がないから絶対に分からないと思っていた。


「先輩に、バイクに乗せてきてもらった」

自慢げに言うショウヘイだったけれど、言葉の節々に必死さが伝わってくるからか、そのことがあたしの恐怖をさらに煽った。

「もう帰って……」
「どうしても会いたい。」


必死に懇願するあたしと一歩も譲ることのないショウヘイとの2人の間に押し問答が続く。

その間、ずっと怖くて怖くて泣きそうだった。

あたしは、今回解決しないと、また週末になるとこんな風に家まで押し掛けて来るのではないかと感じた。


最終決着をつけるためにあたしは、ショウヘイのところへ行くことにした。
 
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