カテキョ。
 
先生の隣にいた小さな彼女は、サキだった。

サキはニコニコ笑いながらあたしに手を大きく振っていた。

先生はニコニコ笑顔のサキの隣でサキとは対照的に、気まずそうな顔をしていた。

先生のその時の表情を、今でも忘れることが出来ない。
 
「知佳ちゃん久しぶり。」


サキはきっとあたしと先生の間にあったことを知らないのだろう。

あたしは泣きそうだったけれど、悟られないように笑顔で話しかけた。


「久しぶり。元気そうだね。今どこにいるの?」

「広島の大学。ゴールデンウィークに戻って来ているの。」


何気ない会話で、先生とサキが遠距離恋愛なのだということを知った。

先生は、あたしとサキの会話を居心地悪そうにして黙っていた。

< 208 / 339 >

この作品をシェア

pagetop