カテキョ。
それからあたしは、悲しくて黙っていた。

先生も黙っていた。
 

溢れそうになる涙を我慢しようと車の窓を少しだけ空けて風を感じた。


初夏の匂いがする沈黙の中で、あたしの頭にはこの3年間が思い返されていた。


これから先、先生の隣を歩くことはもうないことをあたしは確信していた。

それは先生も一緒だったんだろう。

2人で静かに青い空を見上げて、風を感じていた。



先生のことをいい思い出として心の奥深くに残していけると思った。


先生の横顔を見つめながら、あたしはそんな思いを持っていた。

「どうした?」

先生は、あたしが先生の横顔を見ていることに気づいてそう言った。


あたしは焦ってしまい、

「いえいえ、別に……」

顔の前で手を振りながら答えると、先生はいつものようにクスリと笑った。

 
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