カテキョ。
帰りの車は、今までになく空気が重かった。

シンちゃんはきっと今までのことやこれからの未来のことを考えていたのだろう。

何かを悟ったように口を開いた。


「知佳には、ずっと心の中に俺じゃない、好きな人がいるでしょ。」

そう言われて、先生のことを思い出した。


「その顔、図星だろ。しかも誰か当ててみようか。カテキョだろ?」

何も言えないあたしを見て、シンちゃんは笑った。


「ずっと、言おうかどうか迷っていたけど、今だから言うな。」

「1年位前、就職してすぐの頃、知佳、カテキョと会ったでしょ?たまたま、その頃お前の携帯メール見てしまってさ。」

あたしはさらに何も言えなくて、シンちゃんに言葉を待った。

「問いただすのは簡単だったし、会うなっていうのも簡単だったよ。でも俺の中でもずっと解決できない問題だったから。」

私は何も言えずに俯くことしか出来なかった。

「俺らが付き合ったのは、知佳がカテキョに失恋したからだった。勢いだったから、お互いそこに愛なんて多分なかったでしょ。知佳を本当に好きになってからずっと、いつか知佳がカテキョの所に行くんじゃないかと思っていた。相手は生きているから。」


そう言ったシンちゃんの言葉が、暗にヒロアキのことも含めていることをなんとなく感じ取った。


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