カテキョ。
沈黙を破ったのは、またしてもヒロアキだった。
あたしは何も言えなかった。
何も言えなかったのではない。
何と言っていいのか、あたしの言葉の辞書の中に適切なものがなかったのだった。
「知佳のことが気になってる。付き合って欲しい。」
ヒロアキは、そう静かに言った。
あたしはコクリとゆっくり頷いた。
そうすることしか出来なかった。
あたし達はそれからお互い顔を見つめて思わず2人で笑ってしまった。
二人ともうさぎの眼をしていたからだ。
そして静かにキスをした。
それから、堰を切ったように何度も何度もキスをした。
キスをしながら二人で泣いた。
ヒロアキとの初めてのキスは温かな涙の味がした。