カテキョ。
高校2年の冬休みの最終日だった。
あたしはリビングのテーブルで冬休みの課題を必死に解いていた。
苦手な数学には時間がかかる。
向かいに座ってテレビをつけ、新聞に入っていたチラシを見る母に、少しいらいらしていた。
いつもこうだ。
母は勉強しているあたしを気にすることもない。
ふとチラシを見ていた母の手が止まり、あたしをまじまじと見ながら言った。
「ねぇ、知佳。家庭教師、お願いしようか??」
あまりに急な提案に思わず、あたしは母の顔を見た。
「いらないよ。」
ちょっと不機嫌にそう答えると、母は不安そうにあたしの顔を見ながら、
「知佳は教育学部に行くっていうから、2年に進級する時文系コースにしたのに、急にリハビリの専門学校行くって言うから……。リハビリとか医療系は、数学必須でしょ?今のままで大丈夫なの?」
大丈夫かと聞かれたら、大丈夫じゃなかった。
だからあたしは母を見たまま何も言えなかった。