芹沢くんの秘密。
図書室の彼。
高校2年の5月、放課後の教室で。
「花音、かえろーっ」
わたしの自慢の親友、黒崎萌はわたし、川瀬花音の身支度を待っていた。
萌は誰もが二度見するってぐらいの美人で、頭も良くて、ほんとにわたしにはもったいないってくらいの友だち。
そんな友だちの誘いだけれど、今日はいっしょには帰れないんだ。
「ごめん、今日図書室いかなきゃ」
「ああ…、今日金曜日だったね。忘れてたよ〜。花音もさ、図書委員なんてどうせ誰も本借りにきやしないんだから、行かなくてもいいのに」
萌は呆れたように笑った。
わたしはごめん、と萌に謝った。
もちろん、図書委員としての義務、ってのもある。
30パーセントくらい。
でも、残りは。
「どうせ、芹沢くんでしょ」
萌がにやにやしてる。
わたしは急に顔が熱くなるのを感じた。
「そっ、そんなことないよ、」
「嘘つけ〜、顔真っ赤だぞ〜?…ほら、今日こそ話しかけるんだよっ!行っといで!」
ぽん、と背中を押してもらった。
萌ってば、おおげさなんだから。
…そうなんです。
図書室に行くのには、もうひとつ理由があって。それは、
ある男の子に、会いに行くため、なのです。
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