芹沢くんの秘密。



「…これ。今日返却期限だったから、返す」


そう言って差し出された数冊の本。

…なんだ。これを返すためにわざわざ息切れするまで走ってきたのか。


「そんな、少しぐらい遅れてもよかったのに。…でも、ありがとう」


真面目なんだなぁ。

図書室の本なんて、期限二週間なのに何ヶ月も返しに来ないヤツいっぱいいるのにね。


「…別に」



「…ふふ。ていうか、顔の。大丈夫?」


頬に貼ってある絆創膏のことを言うと、芹沢くんはすこし顔をこわばらせた。


…触れてはいけないことだっただろうか。




「これは…ちょっと、猫に引っ掻かれただけ」



「あ、やっぱり!そんな感じかなって思ってたんだよね〜」



嘘だ。


目が泳いでる。



わたし、昔から嘘を見破るのは得意だったんだから。


でも、深追いはできなかった。


芹沢くんが顔で『探るな』と言っているから。


それに、わたしたちは恋人でも友達でもないんだから。


なんだか、今日は久々に切ない気持ちになった。



< 14 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop