芹沢くんの秘密。
目の前に広がる、砂浜の海岸とどこまでも続く広い海。
その上には漆黒の空と、それに反してキラキラと光り輝く月と星。
満天の星空だった。
黒い海が、それらの光を反射して輝いているようにも見える。
少し冷たい海風が通り抜けて、周りの木々をざわめかせる。
こんな場所があったなんて。
「素敵……」
「鎌倉に親の別荘があってさ。小さい頃よく来てたんだ。この場所もその時から知ってる。
俺の秘密の場所なんだ」
鎌倉に別荘とか…。
もしかして芹沢くん、いいとこ育ちなんだろうか…。
そんなことよりも、
好きな人とこんなに素敵な場所に来られたことが、本当に嬉しくて。
「芹沢くんの秘密の場所に、わたしなんかが入っちゃってもいいの?」
「…川瀬さんだったら、いい」
なんて嬉しいことを言ってくれるんだ、この子は。
他の人も連れてきたりしてるのだろうか。
女の子とか…。
わたしだけだったらいいのに、なんて、
我がままなことをつい、考えてしまう。
それほどに、この短期間で芹沢くんとの距離が縮まった気がするから。
「…なに、にやにやしてんの」
「ふふ。べつにー?」
ほんと最近、ニヤけ顔が定着してきたなって、思う。