芹沢くんの秘密。
いつのまにか、それは毎週金曜日の日課となっていた。
芹沢くんを見ること。
正確には、
『見つめ合う』ことだけれど。
図書委員は、貸出返却カウンターの仕事の他にも、返却された本を元の場所に戻したり、本棚を整理するという仕事もある。
普通だったら、本棚の整理なんてめんどくさくてやる人はほとんどいない。
(あ…この本、芹沢くんが座ってるとこの近くだ)
それだけで、胸がドキッと高鳴ってしまう。
わたしは本を元の位置に戻すため、彼のいる方向へ向かっていく。
(わたし…変な歩き方じゃないかな…)
近づくだけでこんなにドキドキするなんて、
話しかけるなんてもってのほかだよ、萌〜!
本を戻しながら、芹沢くんのほうをチラッとみてみた。
ばちっ。
「あ、」
少しつり気味の、切れ長のきれいなひとみと目があった。
すぅっと通った鼻筋と薄めのくちびるもお気に入り。
…って見惚れてる場合じゃない!
目があっちゃった。
どうしよう(いつものことだけど)。
話しかける?
無理無理!
ひとりで混乱しているうちに、芹沢くんは目をそらしてしまった。
(あ〜、わたしの馬鹿馬鹿!!!)
きっと、『じろじろ見やがって変な女だな』とか思われてるんだよ!絶対!
今日は一日中後悔だ。
それも、いつものことだけどね。