芹沢くんの秘密。
(…あ。いた)
校門の壁に背中を預けて、ぼぅっと空を見上げている。
芹沢くんだ。
「芹沢くん!…お待たせっ」
「全然待ってないよ。行こう」
図書館は、学校から歩いて10分くらいのところにある。
芹沢くんは、合宿のときもそうだったけど、いつもわたしの半歩先くらい前を歩いていた。
だけど、歩幅の狭いわたしの歩くペースに合わせてくれていて、そこには気遣いが見えた。
「はぁ〜、着いた…」
「暑かったな」
図書館の中は、灼熱の外とは違ってとても涼しかった。
芹沢くんも暑いのが苦手みたいで、外を歩いてる間はいつもの無表情とは違い顔がげんなりしていた。
「ねえ、勉強する前にちょっと休憩しない…?」
「…は?何言ってんの」
…。
「えっ?」
…なんか今、すごい冷徹な一言が聞こえた気が…。
幻聴だろうか。ていうか幻聴であってくれ。
「そんなんだから赤点とるんだよ。早く、始めるよ」
…幻聴じゃありませんでした。