芹沢くんの秘密。
「なんで、そんなこと言うの?宗介…」
いくら宗介でも、冗談でこんなこと言うとも思えない。
それくらい、わたしは宗介のことを信用している。
「あいつな、エースだったんだ。一年で入部してすぐレギュラー入りしてさ。
なのいあいついきなり辞めたんだ。一年の終わり頃に」
生ぬるい風が、ぴゅう、と吹いた。
赤い日差しのせいで、宗介の表情は読み取れない。
「理由は知らねえけど、最近あいつ、噂立ってんだよ。変な奴らとつるんでる、って」
「変な奴ら、って…」
「なんかよくわかんねーけど。ケンカしてたって目撃情報もある。
だから…あんま関わらねえほうがいいと思うけど、俺は」
あのときの頬の絆創膏が、頭をよぎる。
あの、芹沢くんが…?
ケンカなんて、どんな理由があってもやっていいことじゃない。
だけど、
だけど。
「宗介。心配してくれてありがとう。
だけど、わたしは大丈夫だよ」
芹沢くんのあの優しさ、ふとした時に見せる、意外な一面。
笑顔や、いろんな表情。
嘘だとは思いたくない。というか、思えない。
もし、裏でなにかやってるとしても、それだけは信じたいから。
…それくらい、惚れてるってことなのかな?わたしも。
「…そっか」
宗介は、諦めたように、はは、と乾いた笑いをこぼした。