偽りの翼Ⅰ
なんか、全然違うんだなぁ。
桜風にいた時は朝はパンかカップラーメンかお弁当みたいな簡単なものだったから。
「千尋くん、お料理得意なの?」
これだけのものを作るなんてすごいと思う。
「得意っていうか…。なんだろうな。」
千尋くんは少し何かを考えていた。
「俺にとって料理って大事なものなんだよ。」
大事なもの??…どう意味だろう。
「お袋から教えてもらったんだ。お袋さ、癌を患ってて。死んだんだ、一昨年。」
「…え、」
「最後にお袋から残してくれたのが料理だった。だからね、作り続けるんだ。どんなことがあってもね。」
千尋くんは、お母さんのために?
お母さんのことが、大好き、なんだろうな。