偽りの翼Ⅰ
あれから私は生きる意味を見いだせず、ただただあの路地裏で荒れ狂っていた。
「お嬢さん、どうしたんだい?そんなに荒れて…。こんなところで危ないだろう?」
知らない、不良に絡まれては殴り、蹴り。
「ぐはっ、このクソあまっ!」
殴られても痛みなんて感じなくて。
「ねえ、"影を舞う蝶"って言ったら分かる?」
「もっ、もしかしてお前っっ!!」
影を舞う蝶って言えば皆が私に土下座をする。
「すっすみませんでしたぁ!!」
最近"影を舞う蝶"はこの世界で
要注意人物になっている。
だから、皆が、私に土下座をするのだ。
いつしか私は喧嘩に快楽を覚えるようになった。
荒れて、荒れて、荒れて…。
頭の中にはもう、復讐のことなんてなくて。
一人で勝手にこの路地裏の頂点をとった気でいた。