偽りの翼Ⅰ
「ねえ雅、」
繁華街に向かう途中
「私達はさ、五歳の頃一緒にいたんだね」
雅に言った
「そういうことになるね。…びっくりだなあ」
「あの時さ、あんな事件が起きなければ今も私達はあのまま大きくなっていたかな?」
あのまま…
無邪気だったあの頃
―――――笑って。
こんなに恐れられるような存在にはなっていなかったかな。
桜風にも入らず、今ごろ平和に普通に高校生活を送っていたかな
「さあ?どうだろうね。でも、今よりいい未来が待っていたかもね」
遠くを見るような目で雅は言った。
きっと、雅はお腹の中にいた赤ちゃんを想っているのだろう。
雅もたくさんの苦しみと悲しみを背負って生きてきたから。