偽りの翼Ⅰ
「わわっ、ごめんなさい。前方不注意でした…。」
女はそう言いながらキョロキョロ俺の周りを見渡している。
「何、キョロキョロしてんの」
ただでさえイライラしている上に階段で当たられ、俺の怒りはピークに達していた。
「いや、あのっ。怪我はないかなって思って…。」
「大丈夫だから。いいからさっさと教科書拾えよ。」
そんな俺の声に女は驚いたのか、恐怖したのか…。
「う、あ…はい!ごごごごごめんなさい!!」
女は急いで教科書を拾い、俺にもう一度頭を下げた。
俺、言い方間違えたか?
女が、こっちを見て固まっている。
俺は族の総長だから、俺のことを見てビビっているのかもしれない。
女って分からねえ。
「すみませんでした。以後気をつけます!」
以後って…。またぶつかられんのか…?
それはやだなあ。
そんなことを考えているうちに女は逃げるように去っていった。
―――これが最初の俺とお前の出会い。