椎名くんの進級
「多恵は明日、本当にダメなの?」
 拗ねるような、甘えるような話し方。これが、あの神井先輩の声なのか?どうかしてるだろ。恥ずかしくないのかよ。

「ごめん。急に家族で出掛ける事になって。」
 大野先輩の声は、いつも通りだ。さすがというか、なんというか。

「そう。。。。。」
「本当にごめん。」
「だったら、今日、これからウチに来ない?」
「お母さん、おウチにいるの?」
「いや、今日は遅くなるって言ってたな。でも兄貴がいるかも。」
「本当に?」
「わからない。」
「だったらダメだよ。」
「はぁ。。」
「ごめん。」
「いいじゃん。ちょっとだけ。バレないって。」
「いや、バレるとかじゃなくて。。」
「何が嫌なの?」
「だって、初めて君の家に行くのに。。制服だって汚れてるし。」
「誰もいないんだからいいじゃん。」
「そういう事にだらしない子だと思われたくない。」
「誰にだよ。」
「お母さんと、、、あと、君に。」
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