夏狩り過程
「───っぜひ!」
要くんが視線をまた五郎に戻そうとするから、はじかれたように声が出た。
額から汗が滲む。
夏。ああ、そうだ、夏だね。
「ぜひ来てよ!私いつでもひまだから!」
「いつでも?」
「いつでも!」
「本当に?」
なぜか蝉の声に負けないくらいの必死さで私はコクコク頷いた。
分からないけど、だって要くん、夏みたいに輝いてるんだもん。
「……彼氏とか、いいの?」
「うぐっ。…………聞いてたでしょ。彼氏いない歴イコール年齢なんでっ」
「ハハッ(笑)」
「え、な、わ、笑った!」
要くんは風鈴に負けないくらい涼しげに笑った。
笑った!え、いま笑った?
私の彼氏遍歴の話で、笑った!?
「失礼な!要くんだって」
「ごめんごめん、面白くて」
「おもっ」
「必死じゃん。どうした?」
どうした?って。
別に理由なんてない。
また遊びに来なよって、ただそれだけ。よく分かんない。動機なんてない。
肩を震わせて盛大に笑う要くんを見て、いろんな笑い方をする人だなって思った。
「はー。じゃあお言葉に甘えて、本当に来るから」
「……うん」
「本当に来るからな」
「うん」
「覚悟しとくんだぞ」
「うん」
夏休み。
大好きな夏が、
19回目の夏が はじまった。