夏狩り過程




すぐに家に帰ってマッチとバケツを持ち出して、たどり着いたのは昔よく遊んだ空き地。
どうせなら広いところでやりたいねって。


空はまだ少し明るいけど澄んでいて、白い三日月が見えた。



「こんな明るいうちに花火するって、なんかゼータク。っていうか罪悪感」

「暗くなってきたじゃん、だいぶ」

「そうだね」



バケツに水を入れて、手頃なコンクリートのブロックにろうそくを立てて、ちゃんと蚊取り線香も用意して、準備万端。


ワイドセットの花火。

どれからやろうか悩んでるうちに要が一本しかない大きい花火を容赦なくやり始めて、負けじと二刀流で対抗した。


ひさしぶりだ、手持ち花火なんて。


振り回して空中に「かなめ」って書いたり。
要が「もも」って書く間に花火が終わったり。
意味もなくハート型を書いてみたり。

いいね楽しいね、まだまだ若いよ、私たち。



花火と蚊取り線香のにおい。

水筒には麦茶。

ひぐらしの声。

要の笑顔。


夏いっぱいの空間。



そんなことにはしゃいじゃって、花火はすぐなくなっていった。


余ったのは、



「線香花火……」



あるある。絶対最後まで残る。

一本も減らないで残る。

段ボールにも大量にあったし。




< 22 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop