夏狩り過程



「よし。やるか」

「うん。やろう」



さっきとは打って変わって、しっとりしたテンションで。


ふたりでろうそくを囲んで屈みこんだ。

始まったのは世間話。話題は高校時代のこと。



「俺、中学も高校も野球部で。ずっと部活してたな」

「野球部!……って、なんか意外」



だって私、始めて要を見たとき夏にしては肌白いなって思ったんだよ。今は私より白くなったら許さないって思ってる。


パチパチ、パチパチ。

手元の線香花火が勢いを増して、あ、落ちた。

次、次。



「夏と言えばもっぱら甲子園だったなー」

「わあー、球児だ」



なんだか不思議。

この前まで知らない人だったのに、もうこんな話をしてる。私が知らなかった頃の要の話を、ふたりでしてる。



「だから、夏はずっと練習だったから俺、自由な夏休みってはじめて」



パチ、パチパチ。

ふたりの手元の火花がはじけ出して、ぶつかり合う。



「すっげー楽しいよ、今」



ぽつりと、要が言った。

楽しい、んだ。

ほとんど毎日家に来て、私や五郎と何をするでもなく過ごしてるだけなのに。



「そっか、そうなんだ、楽しいんだあ」

「……楽しそうデスネ」

「いやぁ~、うふふ」




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