夏狩り過程
夏休みはずっと練習してて、野球ばかりしてて、だから今年の夏の、私と五郎が、要の始めての自由な夏休みの最初の思い出で。
って。
「……へっへっへ」
「えい」
「あーっ!」
要の顔を見ながらにやにやしていたら、要が朝顔のうちわで私の火玉を扇いだ。見事に落ちた。
ず、ずるっこだ!
「で、百は?夏休みの思い出とか」
満足げにまたうちわをポケットにさしこみながら要が言う。
まあ実は、うちわを持ってくれてるってところも喜びポイントだからどちらにしろにやにやしちゃうのはしょうがないんだけど。
「えー、夏休みかあ」
「彼氏と遊んだとか」
パチパチ、要の花火だけが大きくなっていく。
「……彼氏とかいたことないんでっ」
「そっか(笑)」
「分かってて言ってるでしょ!」
この前もこんなやり取りしたもんね。覚えてるもんね。
腹いせにふーっと要の手元の火玉を吹いた。きれいに落下。よしよし。完璧だ。
ああなんか、この感じ。
「要はいたでしょ。なんかモテそう」
一緒にいて分かるけど。
そう言うと要はまるい目で新しい線香花火の先から私へと視線を移し、そして空中をしばらく眺めた。