夏狩り過程




「高校のころはマジで野球しか興味なかったんでー。……中学は、いたけど」

「へえ」



中学か。当たり前だけど知らないな。

知らないなー、昔の要。



「ふわふわで茶色っぽい長い髪で」



手元に目を落としながら要が口を開いた。

昼間よりは温度の低い、だけどまだ暖かい風がふたりの間をかけぬける。

また火玉が落ちた。

私の栗色のくせっ毛ロングが風になびいた。



「目は大きくてよく笑って」



私はまばたきをひとつして、その間に要は次の線香花火を取り出した。

ひとつを私に渡して、自分の花火に火をつける。



「夏が好きな、ヤツ」


「…………」


「百に似てるヤツ」



火のついた先は不安定に揺れながらやがてまるい光となって瞬きはじめた。

私に、似てる、ヤツ。



「まあ短かったけどね、すごく」



はっはー、と笑うから要の先の光がぽとり。流れ作業のように要は次の花火に火をつけた。


しばらく黙っていると、足がしびれたのか要は一度立って屈伸をして、また隣に屈む。



「それよりも俺の大恋愛は初恋ですよ」




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