夏狩り過程
「どう? 大学楽しい?」
警戒心を抱かせない笑顔で、要くんが黒髪を揺らす。
片手に西瓜。
似合うなあ。
「楽しいよー。むだな講義が多いけどね」
「なー。俺も思ってた」
同い年かあ。近所かあ。
「1年のうちはしょうがないんだろうなー」
今までどこに隠れてたんだろ。こんな人。
大学1年の夏休みに、初めて出会うなんて。
ぽけっと要くんの顔を見ながら呆けてたんだと思う。
「ん?」と、要くんは首を傾げた。
「なんかついてる?」
「えっ。つ、ついてない!なんでもない!」
「何だソレ」
「西瓜おいしいね!」
とっさに首を横にぶんぶん降りながら次の西瓜を手に取ると、要くんがニヤリと笑った。
あ。そんな表情も、するのですか。
「だろー。これ、うちの」
「え?」
「うちのばあちゃんが作ったやつ」
「えっ。そうなの?畑で?」
「そうだよ。ウマいだろ」
「おいしい!すごく!」
今年初の西瓜は冷たくて甘くて瑞々しくて、要くんのおばあちゃんの愛情入り。ってことだ。
贅沢品だ。
私は振らないけど、要くんは塩を振る派らしい。
そんなことしなくても十分甘いけど。