坂道では自転車を降りて
「鈴木は私が応援してやるから、多恵にちょっかい出すなっ。スカポンタン!」
清水先輩もいたんだ。スカポンタンって、古いよ。
「神井っ。この男をやっっておしまいっ」
やっぱりドロンジョ様なんだ。とてもよくお似合いです。
「清水は俺の応援するんじゃないのかよ。」
鈴木先輩がぼやく。

 周囲から笑いが起こる。気を取り直し集中する。たとえ負けても、最後まで、楽しんでやりきろう。みんながそう思っているのが分かる。
 先輩へのパスをカットした。そのままドリブルで上がるが、すぐに追いつかれる。睨み合う。あっさり捕られ、また追いかける。
「くそっ」
「お前にだけは、負けてやらん。」
 俺は何度でも追いかけ、何度かはボールを奪い、その度に取り返されたが、楽しかった。時間は過ぎ、結局、試合は大差で負けた。しかし、気持ちいい試合だった。

 再び整列すると、また先輩と目が合った。爽やかに笑う顔に、こちらも笑顔を返した。一礼し、試合は終了した。試合が終わると飯塚は早速、大野多恵のところへ走って行った。
< 139 / 874 >

この作品をシェア

pagetop