坂道では自転車を降りて
「応援ありがとう。」
「最後までみんな楽しそうで、かっこ良かったよ。」
飯塚は、ここぞとばかりに彼女と話し込んでいた。俺は少し離れたところで、汗を拭き水を飲んだ。彼女がこちらを見ていたので、手を振ってやると、はにかむような笑顔で笑った。少しして、3年生の一団が彼女の前を通り過ぎるとき、鈴木先輩が彼女に声をかけた。大きな手で彼女の頭を掴みぐちゃぐちゃにする。
「多恵~。俺の応援に来たんじゃなかったのかよー。」
「残念ー。違いまーす。」
見ると飯塚がうらやましそうに眺めている。。鈴木先輩、彼女に言ってることと、自分がやってることが違う。それとも男除けのつもりかな?ふと、さっきの黄色い声援と川村の言ったことを思い出し、あたりを見回す。いたいた、彼女のことを睨んでいる女性陣。目が、結構怖いんですが。。。先輩ももう少し考えて行動するべきだと、川村の苦労に同情した。
「ちょっと、多恵に触らないでよ。」
いきなり大きな声がした。清水先輩だ。つかつかと鈴木先輩に歩み寄る。鈴木先輩は苦笑いしている。
「ヘラヘラ笑ってる場合じゃないでしょ。多恵がまた怪我でもしたらどうすんのよ。」
清水先輩の剣幕に、鈴木先輩もむっとする。またって?
「どういう意味だよ。」
鈴木先輩が答える。周囲が騒然となった。
「あんたフラレたんだから、いいかげん諦めなさいよ。往生際が悪いんだよ。」
どよめきが広がる。