坂道では自転車を降りて
 俺は彼女の作業着を思い出した。彼女は、本格的に作業する時には、制服のスカートを脱いで、カッターシャツの上にオーバーオールを着ていた。かっちりと襟の立ったカッターシャツとのっぺりしたオーバオールの組み合わせは、アンバランスでなんだか妙な色気があった。脇から覗いた胸当ての隙間や、意外にボリュームのある尻はセクシーといって良いだろう。なんであんな服を着てるんだろう。いや、大工仕事でオーバーオールというのは正解のはずだ。間違ってない。

「大野先輩は、彼氏とか?」
「あれは、どうみてもいないだろ。仕事一筋ってか、女じゃないだろ。可愛げのカケラもない。」
「そこが良いんじゃないか。」
「椎名はマゾなのか。」
「いや、あの武則天みたいな先輩が、自分にだけ可愛く笑って甘えてくるところを想像してみな。むちゃくちゃ萌えるぞ。」
「そんな風になるわけないだろ。馬鹿だな。」
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