坂道では自転車を降りて
 一年達はその後も演劇部の女性陣を一通り批評した。俺は身体を洗い終わって、湯船に入った。
「神井先輩は、もう少し女性に優しくしないと、モテませんよ。」
突然、話をふられた。今日のことを言ってるんだろう。
「好きでもない女にモテたって、意味ないだろ。」
余計なお世話だ。
「でもあんなんじゃ、好きな人にだって、逃げられちゃいますよ。」
「あんなの、面倒臭くて。お前らよくやってられるな。」
「そうですか?可愛いじゃないですか。」
「そぉかぁ?」

「神井は、これで意外とモテるんだぜ。」
川村が割り込んで来た。
「デマを流すなよ。今までモテたことなんてないぞ。」
「美波さんだって、神井狙いだったんじゃないかな?」
「そういえば、、、、」
一年坊主達は納得している。本当か?

「本人に自覚がないところも、誰かさんと似てるよな。」
川村が続けた。誰かさんって誰だ?
「神井先輩、モテる秘訣を教えてくださいよ。」
「だから,俺はモテたことなんてないって。それよりお前ら、そろそろ上がらないとのぼせるぞ。」
「神井のまねはお前らには無理だよ。女の子が喜ぶやり方なら、俺が教えてやるぞ。」
「本当ですか!」
椎名が無邪気に喜んでいるが、
「馬鹿だな。お前と先輩じゃ顔が違うだろ。」
織田に痛い指摘をされている。

 レクチャーできるほど川村はモテるのか?心の中で突っ込みながら、川村のレクチャーを聞き流した。俺はどうしたらモテるのかよりも、あのめんどくさい女子達に、忍耐づよく付き合えるお前らの心理のほうが知りたい。やりたい一念のみでは到底無理なミッションだ。
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