坂道では自転車を降りて
 夏休みは活動時間が長い分、活動がだれる。役者はシーンごとに交代だが、主役と演出はぶっ通しだ。お互い集中が切れて来たので、休憩のため一度部室に戻ると、部員達が遊んでいた。

「お前ら、各自やっとけって言っただろ。上杉は上手く転べるようになったのか?小道具は?」
「コケすぎて尻が痛くなりました。まだ出来てませーん。すみませーん。」
「何やってんだ?」
見ると、裏方も巻き込んで、何やらカードゲームをしている様子だった。

「なんとかって、数当てゲームよ。今、決勝戦。」
美波が教えてくれた。
「川村先輩と大野先輩です。この二人がダントツ強くて。」
「私なんか、何度やってもよく分からないわ。なんで当たるの?」
「相手の言葉からもいろいろ推理できるんですよ。俺、川村先輩にあっという間に丸裸にされちゃった。」
「今回は川村もブラフまで使って、必死だぞ。」
原が小さな声で耳打ちする。
だが、彼女も騙されてはいないらしい。緊張するやり取りが続いた。

「あーっ。負けた。悔しい。」
どうやら終わったらしい。
「ふーっ。大野さん、普段と違って、なかなか騙されないね。最後は運だったな。」
「だって川村くん騙しそうだもの。あー、脳みそ沸騰しそう。疲れたー。もうやだ。」
「俺も、もういい。」
「誰だよ、こんなの持って来たの。」
「はーい。俺です。」
「お前、早々に負けてたじゃん。」
「すみません。」
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