坂道では自転車を降りて
主演の中川と顔を見合わせる。
「俺もやってみたいな。誰か教えてくれないか?中川やらないか?」
教えてもらいながらやってみた。やってみて分かったが、論理性を問われるゲームだ。情報を元に論理的に考えれば、選択肢は狭まり当たりやすくなる。アタックのやり方によって道は長くも短くもなる。運よりは数学的な脳みそが要求される。プレーヤーが多くなれば、一度に考えなければならないことが増えるので、演算速度に記憶力もかなり必要だ。

 とりあえず中川には勝った。論理的という点では自分の脳みそにも多少の自信はあった。一勝するともう少しやってみたくなる。相手を捜したが、皆、飽きてしまったのか、なかなか相手が見つからなかった。

「川村は?」
「神井先輩、いきなりチャンピオンに挑戦は無謀ですよ。」椎名が言う。
「俺、もう疲れたし。大野さんに勝ったら、やってやるよ。」
「私?私ももう疲れたんんだけど。あ。。」

彼女は何か思いついたようだった。
「川村くん、神井くんが私に勝ったら、神井くんと絶対やる?」
「勝ったらね。真面目にやってだよ。」
「神井くんなら、川村くんに勝てそうな気がする。やろう。」

 彼女とやれるなら、それはそれで嬉しいが、これは、簡単に負ける訳には行かなくなった。しかし、札を配っていざゲームを始めてみると、彼女は想像を遥かに超えて強かった。俺とはレベルが違う。途中、明らかに手加減されているのが分かってしまった。ゲーム的には惜敗で終わったが、なんだか恥ずかしいことなってしまった。彼女も申し訳なさそうな顔をしていた。俺、格好悪いな。
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