坂道では自転車を降りて
 礼もそこそこにまたスケッチブックに戻る。俺は、このまま動かない方が良いんだろうな。ちっとも書けてないパソコンの画面を眺める。

「あ、なんか、表情が。。笑。」
「違う?」
「違う。笑。何かが抜けちゃった。笑。」
「そうか。」
自分では分からないけど、何か違うらしい。再び脚本に集中しようと試みるが、あまり効果はない。

「ふうっ」
しばらくすると、彼女が息を吐いた。スケッチブックから顔を離して、描いた絵を眺めている。
「出来たのか?見てもいい?」
どんな風になったんだろう?

「結構良く描けたと思う。でも、、見せたら怒るかも。」
恥ずかしそうに頬を染めて、上目遣いに俺をみる。それって、わざとやってる?わけないか。あざとさがないからか、自分はこんなのに騙されないと思っていたのに、結局、俺の心臓は素直に反応しちゃってて、我ながら情けない。俺が固まっていると、恥ずかしそうな仕草で、ゆっくりとスケッチブックが手渡された。描き上がった絵を見てさらに驚く。

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