坂道では自転車を降りて
「顔じゃん。」
「ごめん。描きたくなって。」
「っていうか、俺こんなに格好良くないし。」
一応俺だけど、どう見ても2割増美男子になってる。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。見ていられなくてスケッチブックを返した。

「絵なので、サービスしてあります。」
「サービスって、そんなんありか!」
「冗談だってば。書いてるときの神井くん、カッコいいよ。だから描きたくなっちゃったの。」
自分の描いた俺の横顔の絵を眺めながら、眩しそう目を細める。

「。。。。。。」

そんな顔してカッコいいとか、言うなよ。マジで勘違いするだろ。彼女は満足げに笑いながら今度は俺の顔を見た。頼むから俺を見るな。ダメだ。どんな顔して良いのか、全然わからん。俺の頭の中は軽くパニックを起こしていた。

「この唇を、カッコよく描くのが難しかった。髪も癖があるよね。」
彼女が真剣な眼差しで俺の顔(のパーツ)とスケッチブックを交互に眺める。視線が俺の唇から額の方へ移動する。彼女の視線が向いた場所が、ムズムズして勝手にブルブル震えているような気がする。心臓がっ、止まりそうだ。俺が動けずにいると、彼女のほっそりとした手が俺の額めがけて伸びて来た。うわぁぁぁぁっ。ダメだっ。俺に触るなぁぁぁぁぁっ。
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