坂道では自転車を降りて
教室棟の5階、図書室の奥には、階段教室がある。詰めれば1学年分くらいは入れそうな階段式の講義室だ。演台があり、窓には暗幕がかかり、スライドや映像を使った講義や、講師を招いての講演会などに利用される。文化祭では音楽系の出し物や自主制作映画の上映が行われる。
「鍵が閉まってるんじゃないの?」
そう、階段教室だって鍵は閉まってる。
「閉まってるよ。もちろん。」
俺はポケットから鍵を取り出して、指先でくるくる回して見せた。
「なんで、川村くんが鍵持ってるの?」
彼女は目を丸くした。
「秘密の合鍵。」
音楽関係の先輩からの遺産だ。最近昼に練習する機会が増えたので、持ち歩いている。もちろん、利用許可は取ってるし、職員室に本物の鍵を取りにも行く。が、合鍵を持っていた方が断然便利だ。
「えーっ。いいの?」
「良いわけないだろ。誰にも言うなよ。」
「ずるぅい。っていうか不良だ~!」
「いまさら。」
不良って言い方が、古いというか、オバハンみたいで笑える。
「それどうしたの?」
「先輩に貰ったんだ。それに、多分、先生も知ってる。」
「ふーん。」
「もちろん、普段は利用許可も取ってるし、職員室の方の鍵を使ってるよ。これは単なる予備。ほら、俺って品行方正だからさ。」
慣れた手つきで鍵を開ける俺をみて、彼女の目が胡散臭いものを見たように細くなる。
「品行方正ね。そうだったんですかー。初めて知ったわ。」
「そうだったんですよー。知りませんでしたかぁ?」
2人でクスクス笑う。階段教室の重たい鉄扉を開ける。中は暗闇だ。
「去年、確か、来てたよね?」
「来た。忘れてたけど。」
忘れてたか。まあ、いいけどね。
「鍵が閉まってるんじゃないの?」
そう、階段教室だって鍵は閉まってる。
「閉まってるよ。もちろん。」
俺はポケットから鍵を取り出して、指先でくるくる回して見せた。
「なんで、川村くんが鍵持ってるの?」
彼女は目を丸くした。
「秘密の合鍵。」
音楽関係の先輩からの遺産だ。最近昼に練習する機会が増えたので、持ち歩いている。もちろん、利用許可は取ってるし、職員室に本物の鍵を取りにも行く。が、合鍵を持っていた方が断然便利だ。
「えーっ。いいの?」
「良いわけないだろ。誰にも言うなよ。」
「ずるぅい。っていうか不良だ~!」
「いまさら。」
不良って言い方が、古いというか、オバハンみたいで笑える。
「それどうしたの?」
「先輩に貰ったんだ。それに、多分、先生も知ってる。」
「ふーん。」
「もちろん、普段は利用許可も取ってるし、職員室の方の鍵を使ってるよ。これは単なる予備。ほら、俺って品行方正だからさ。」
慣れた手つきで鍵を開ける俺をみて、彼女の目が胡散臭いものを見たように細くなる。
「品行方正ね。そうだったんですかー。初めて知ったわ。」
「そうだったんですよー。知りませんでしたかぁ?」
2人でクスクス笑う。階段教室の重たい鉄扉を開ける。中は暗闇だ。
「去年、確か、来てたよね?」
「来た。忘れてたけど。」
忘れてたか。まあ、いいけどね。