坂道では自転車を降りて
彼女とは相変わらず、まともに話ができずにいた。遠目に見ても、彼女は少し痩せたような気がする。やつれたというべきか。舞台の準備と美術部での作品の仕上げ、いろいろ忙しかったのだろう。
それにしても、俺は彼女に何をしたのか、皆目見当がつかない。それとも単に彼女に他の何かがあったのか。しかし、ここまで嫌われているとなると、何か自分にも原因があるのだろう。今となってはその原因を知ることは永久にできないような気がした。
文化祭が始まった。模擬店やら、お化け屋敷やら、色物系のクラスの出し物は楽しいが、これが文化といえるのか疑問だ。俺は文化部の展示を見て回っていた。数学部のプログラム、天文部の展示は、完成度は高いが、去年と似たようなものだった。すごいのかもしれないが、俺には進歩がよくわからない。手芸部はパス。落語研究会の演目をチェックして、美術部の展示室に入る。大野多恵の作品があるはずだ。
彼女の作品はどれも人物だった。座っている生徒、雑談している友達。遊んでいる子供。ほとんどが鉛筆と水彩絵の具で描かれた絵だったが、一点だけ粘土で作ったと思われる造形作品があった。テニスをする男性の像だった。躍動的な筋肉の質感が良く出ていた。鈴木先輩だと直感した。先輩は中学の時はかなり本格的にテニスをしていたらしい。怪我が克服できず、道を諦めたと聞いた。今でも細々とは続けているのか、時々、テニス部に呼ばれて、選手の練習相手をしていると聞いた事がある。
この作品を仕上げるために、何枚先輩の絵を描いたのだろう。図書室で見たスケッチブックを思い出す。俺の絵をたくさん描いてくれた。練習だと言っていたが、本当にただの練習だったのだと、思い知らされた。
それにしても、俺は彼女に何をしたのか、皆目見当がつかない。それとも単に彼女に他の何かがあったのか。しかし、ここまで嫌われているとなると、何か自分にも原因があるのだろう。今となってはその原因を知ることは永久にできないような気がした。
文化祭が始まった。模擬店やら、お化け屋敷やら、色物系のクラスの出し物は楽しいが、これが文化といえるのか疑問だ。俺は文化部の展示を見て回っていた。数学部のプログラム、天文部の展示は、完成度は高いが、去年と似たようなものだった。すごいのかもしれないが、俺には進歩がよくわからない。手芸部はパス。落語研究会の演目をチェックして、美術部の展示室に入る。大野多恵の作品があるはずだ。
彼女の作品はどれも人物だった。座っている生徒、雑談している友達。遊んでいる子供。ほとんどが鉛筆と水彩絵の具で描かれた絵だったが、一点だけ粘土で作ったと思われる造形作品があった。テニスをする男性の像だった。躍動的な筋肉の質感が良く出ていた。鈴木先輩だと直感した。先輩は中学の時はかなり本格的にテニスをしていたらしい。怪我が克服できず、道を諦めたと聞いた。今でも細々とは続けているのか、時々、テニス部に呼ばれて、選手の練習相手をしていると聞いた事がある。
この作品を仕上げるために、何枚先輩の絵を描いたのだろう。図書室で見たスケッチブックを思い出す。俺の絵をたくさん描いてくれた。練習だと言っていたが、本当にただの練習だったのだと、思い知らされた。