坂道では自転車を降りて
「川村くん、手。。」
彼女は蒼白な顔をしていた。
「怪我したのか?」
俺が訊ねると
「いや、大丈夫。」
川村が言った。
「嘘っ 見せて。」
彼女が強引に手を取ると、川村は顔をしかめた。
「やっぱり怪我してる。痛むんでしょ?早く、保健室に、」
見る間に涙で目が潤んでくる。
「私が、ちゃんと見てなかったから。」
「いや、それより早く運ばないと。」
川村は壁を指差して言う。
「だめ、すぐに保健室に行って。お願い。」
「でも、舞台が、音もあるし。。」
「嫌っ、今すぐ行って。」
彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ始めた。こんなメロドラマ見ていられるかっ。

「お前ら、とりあえず4人で壁を運べ。」
俺は一年に指示を出した。
「川村はすぐに保健室行って手当てして貰ってこい。開演には間に合うだろう。音はどこにある?」
「まだ部室に。」
「大野さん、すぐ大道具の指示に戻って。川村、高橋は準備くらいなら一人でできるんだろ?」
「ああ。」
「だったら、さっさと行け。」
「頼む。」
川村は早足で保健室へ向かった。彼女は呆然と見送っていた。
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