坂道では自転車を降りて
 とりあえず、礼を言われたということは、俺は役に立っていたという事で、まあよかった。あの後は、彼女も気をつけて乗車しているので、痴漢には遭遇していないという。

「お前、昼飯まだだろ?俺達も昼飯まだなんだ。一緒に食おうぜ。」
原がさらに余計な事を言って、俺の予定を仕切り始めた。女の子を誘うとか、普段の原からは考えられない行動だった。文化祭という異常な雰囲気に原までが呑まれているのか。

「でも、どこも混んでて、時間がかかりそうです。」
食中毒などの対策か、金の問題か、テーブルで食事ができる店は3店舗しかなく、とても混んでいた。他に、購買と同じものを売っているだけの店がいくつかあるだけで、食事事情は著しく悪かった。俺は知っていたので弁当を持って来ていた。

「なんか適当に買って、部室で食べようよ。どう?」
「私達、部外者どころか、ここの生徒でもありませんが、部室にお邪魔して大丈夫なんでしょうか?」
もう1人の私服の子が尋ねる。
「別にいいんじゃないの?部員の父兄だったら普通に入るような気もするし。なぁ。」
俺に同意を求める。
< 192 / 874 >

この作品をシェア

pagetop