坂道では自転車を降りて
「なんでお前なんだろうな。俺でも先輩でもなく。。。。先輩なら、まだ納得行ったんだけど、。。」
 俺の知らない3人の時間に、川村は、彼女は何を思っていたのだろう。あの夜、彼女に変わらないで欲しいと言った川村の言葉を思い出した。
「まあいいや。後はお前が先輩に殴られて、一件落着だ。」
そうだった。先輩のこともあったんだった。
「すぐ別れるかもしれないしな。その時は、彼女は俺達が念入りに慰めてやるから、心配しなくていいぞ。」
くそっ。こいつには、おちょくられっぱなしだ。

「そうだ、これ、神井の分。」
川村は一枚のCDを鞄から出した。
「あの曲。神井、聞いてないだろ。他も一通り入ってる。」
「ごめん。文化祭の日はバタバタしてて、忘れてた。」
本当は忘れていた訳ではない。行きたくなかっただけだ。今思えば、バカなことをした。
「あの脚本がきっかけだったんだ。」
「??」
「神井の書いた本を読んで気付いたんだ。ずっとこうしてはいられないんだって。俺達は成長する。彼女も。俺も。」
「。。。。」

< 218 / 874 >

この作品をシェア

pagetop