坂道では自転車を降りて
 確かに調子が良い割には、演劇に関してはノリが悪くて、浮いた存在ではあった。単に役者じゃないからではなかったのか。驚いた。こいつはそんな頃から、彼女を見てたって言うのか?
「そればっかりじゃないけどな。他に入りたい部もなかったし。でも、もう辞めよっかな。なんてな。」
「。。。。。」
「冗談だって。引退まで粘るから、俺にとられないよう、せいぜい気をつけるんだな。」
川村は自転車に乗った。

「じゃあな。」
「ああ、また明日。」
 明日からも、彼女にとってあいつが最も親しい友達であることには変わらないだろう。ならば、あいつは隠し通す。何もなかったような顔で傍に居続ける。そういうやつだ。
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