坂道では自転車を降りて
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 いろんな音が、遠くに聞こえる。学校って、いろんな音があるな。廊下を走る音。先生の声、男子の声、女子のおしゃべり、何かを運ぶ音。ドアの開く音。椅子を引く音。始業のチャイムがなると、音は急に減り、あたりは静かになった。
 誰かが廊下を早足で近づいてくる。と、ドアの開く音が間近で聞こえた。ドアを開けた人物は足音を忍ばせてこちらへやって来た。

「神井くん。」
「おう。」
答えると、ほっとした表情の彼女が近づいて来た。
「起きてたんだ。大丈夫?」
「全然、平気。」
俺はベッドの上で起き上がった。心配して来てくれたんだ。すげー嬉しいかも。

「気絶したって男子が話してて、びっくりして。」
「気絶ってわけじゃ。ちょっとふざけすぎた。」
「だって、柔道って危ないって、ニュースでよくやってる。」
「大丈夫。どこも痛くないし、ここへも念のため来ただけで、自分で歩いて来たよ。」
「本当に?大丈夫?」
「絞め技くらっただけなんだ、俺もムキになって降参しなかったから。」
「聞いたよ。飯塚くんでしょ!柔道部なんだから、相手になるわけないのに。」
「いや、だから、」
「あいつめ。私の神井くんに。。今度、見かけたら、どうしてくれよう。」
「本当に止めてくれ。俺も一緒にふざけてただけなんだ。」
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