坂道では自転車を降りて
俺と彼女は、並んで保健室を出た。彼女は不満そうだ。俺は頭をなでてやった。
「俺も、ちょっと残念。」
「一緒にいられると思ったのに。ちぇっ。」
ちぇって、女子が使う言葉なのか?
「。。。。部室、一緒に行く?」
俺は更衣室ではなく部室で着替えたので、制服が置いてあった。
「えっ。」
授業をさぼって部室で過ごすなど、真面目な彼女は考えたこともなかったのだろう。理解するまで、数秒を要した。

「あー、どうしよう。」
さらに悩んでいたが、意を決したように言葉を継いだ。
「行くっ♡」
きっと今まで、授業をさぼったことなど、なかっただろうに。頬を染めた彼女の言葉にちょっとだけ罪悪感を覚える。

 行くと決めたら、楽しみになったみたいで、彼女は上機嫌で歩いていた。部室に着いた俺は、まずは汗臭い道着から制服に着替えたかった。
「ごめん。先に着替えるな。」
「あ、そうか。出てるね。」
彼女は前室へ戻ろうとして、振り向いた。
「やっぱり、ここで見ててもいい?」
「えっ。」
「嫌?」
「あー。。」
「ごめん。やっぱり出てる。」

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