坂道では自転車を降りて
今のは、なんだったんだろう。俺が着替える所が見たかったのか?いや、単に1人になるのが心細かったのかもしれないな。着替えを終えて彼女を呼び戻す。彼女は落ち着かない様子で入室した。
「なんか、落ち着かないね。どうする?」
「やっぱり教室に戻る?」
「うーん。」
「一緒にいようよ。次の休み時間まで。」
「うん。」

彼女は頬を染めて頷いた。そして、いつも図書室でしているように机に着いた。何して遊ぶ?戸惑いながら、目で訊ねる。
「今日はせっかく部室に二人だけなんだから、もうちょっと違うことしようよ。」
「何するの?」
何と言われると、、なんとも言いようがない。。
「ちょっと、、、、こっち来て。」
立ち上がり近づいて来た彼女の腕をとり、ゆっくりと引き寄せる。少しだけ抵抗があったけど、構わず抱きしめた。彼女は電流が流れたようにビクッと躯を震わせた。
「嫌?」
耳元でささやいた。
「嫌じゃないよ。でも。なんか、、恥ずかしい。」
しばらく彼女は身体を硬くしてモゾモゾ動いていたけど、何度か息を大きく吐いて、やがて落ち着いた。彼女の躯からしだいに力が抜ける。よし、大丈夫だ。俺もようやく大きく息を吐いた。華奢な身体。むにむにと柔らかくて温かい。原っぱみたいな彼女の匂いが俺の鼻を通って、肺に流れこむ。すっげー気持ち良くて、クラクラする。どうしよう。髪、触って良いよな。つるつるの髪をなでてやる。うっかり耳に触れるたら、くすぐったそうに笑った。
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