坂道では自転車を降りて
「何するの?」
「何もしないで、ずっとこうしてるの。。でも、そうだな。。」
俺は少し考えるふりをしてから、おでこを近づけ瞳を覗き込んで言った。出来るだけ優しく言いたい。
「キスとか。。してみる?」
「。。。。」
困惑した表情。ちょっと早かったかな。もしかして初めてかも。
「したことある?」
「ない。」
やっぱりそうか。あの時、先輩とは何もなかったんだ。
「実は俺もないんだ。」
「そうなの!」
ほっとして、うっかり口を滑らせてしまったが、返ってよかったらしい。急に表情が明るくなり、警戒が解けていくのがわかる。それが嘘かもしれないとは思わないのか。あまりにも簡単で心配になる。
「してみる?」
「。。。。。」
やはり答えない。まだ怖いらしい。でも嫌と言われないだけ、この前よりは進展している。はず。
「いいよ、急がないから。だったら、今日はずっと、だだこうやって抱きしめていたいな。いい?」
彼女はこくりとうなずいた。