坂道では自転車を降りて
 顔をよく見ようと上げさせ、ぎくりとした。彼女は泣いていた。閉じた目から涙が後から後からわいて、頬を伝って落ちた。紅い鼻、濡れた唇。可愛い泣き顔に、また胸が苦しくなる。彼女は顔を背け、また元の体勢にもどった。どういうことだ?やっぱり嫌だったのか?

「どうした?」
「なんでもない。。。。」
「教えてよ。」
「わからない。なんだろ、可愛いって言われたら、勝手に出て来た。」
「。。。そっか。。」
「もう少し、このままでいい?」
「あぁ。そうだね。」

 ややこしい娘だな。。でも、そういうところも、彼女らしくて可愛いかもしれない。

< 230 / 874 >

この作品をシェア

pagetop