坂道では自転車を降りて
「いや、それより、今はお前の話だ。」
「そうですね。俺達の劇は、どうでしたか?」
「ん、、まあ、よかった。特に脚本が。でも、お前、直前で演出降りたんだって?」
「その、いろいろあって、、、でも、良い経験でした。」
「そうか。コンクールは残念だったらしいな。」
「はい。」
「多恵は、どうしてる?」
「元気ですよ。」
「結局、お前がとったのか。」
「えっ?」

「お前と付き合ってるのか?って訊いてるんだ。」
「付き合ってるっていうか、、告白りました。」
「で、多恵はなんだって?」
「はっきりとは、、でも、俺だけだって、言ってくれました。」
「そうか。。やっぱりお前か。川村は、どうした?」
「どうって。。元気ですよ。多分。」
「曲、川村が自分で作ったって言ってたな。」
「そうです。あいつすごかったんですね。」
「らしいな。」

先輩は中庭から部室の窓を見上げた。
「多恵とは、いつから?」
「文化祭の後くらいです。」
「川村はよく黙ってたな。」
「あいつにはいろいろ世話になりました。」
「感謝しろよ。あいつが本気で口説いていたら、多恵なんか、瞬殺だ。」

 確かに、あいつは女子の扱いがものすごく上手い。女には不自由していないだろうと周り中に思われていた。
「。。。。」
「あいつはあいつで、いろいろ間が悪くてな。。でも、つきあってなくても、川村は本当に多恵を大事にしてたぞ。だから、多恵が自分で決めるのを待ってたのかもしれないな。あいつも馬鹿だよな。みすみす盗られるのをただ見てたなんて。せっかく俺が恥かいてやったのに。」
 先輩は知っていたのか。それにしても、先輩と川村、言ってることがそっくりだ。
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