坂道では自転車を降りて
「その手紙を置いてった子。見たよ。」
「えっ。」
「あの子、誰?」
「いや、俺は知らないんだ。男か女かも。」
「知らないってことはないんじゃない?女の子だったよ。」
「一年生?」
「さあ?でも、心当たりはあるんだ。」

まずい。どうやって説明しよう。
「あのさ。」
恐る恐る振り向くと、彼女はぷぷぷと笑い出した。俺も何が何だか分からないけどへなへなと笑った。

「無記名は不気味だったか。」
「へ?」
あっ。やっぱり彼女だったのか!最初から全部!

「俺のこと、騙したな!からかったのか?」
「ごめ~ん。」
「もう!何考えてんだよ。人が悪いぞ。」
「本当は、もっと素敵に文通しようと思ってたのに。」
「あんなの不気味だよ。誰かも分からないなんて。」
「言われてみればそうだね。で、神井くん、校外に彼女がいるんだって?」
「いーまーせーんーっ。誰かも分からないヤツに答えて、本当の事を書く必要もないし。そんなこと書いたら、君が危険な目に遭うかもしれないじゃないか。」
「確かにね。」
「君は何がしたかったわけ??」
「ん~。自分でも良くわからない。イタズラ?」
「あきれたやつだな。こっちの身になれよ。」
「ごめんなさい。」

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