坂道では自転車を降りて

「何か悩み事がありそうなんだけど、雑談はするのに、どうしたの？って聞いても、はぐらかされたり、無視されたりで、取りつく島もなくて。なんか、嫌だなぁ。」
「うーん。少し様子を見てみたら？大野さんは、あまり気にしなくて良いんじゃないかな。」
「でも、私、今までずっと彼に頼りっぱなしだったの。神井くんと上手く行かなくなった時だって、川村くんが元気出してって言ってくれて。少しぐらい役に立てたら良いのに。」

「それは。。。。無理なんじゃないかな。」
「無理ってなんで？私が鈍感で配慮がないら？」
あ、一応、鈍感で配慮が足りない自覚はあるんだ。
「そんなこと、なくはないけど。」
「それとも神井くん、何か知ってるの？」
「いや、ホント、なんとなく。」
「神井くん知ってるなら教えてよ。私にできることないの？」
「知らない。なんとなくだよ。男はいろいろあるんだよ。」
「何それ。男はって、私が女だから何もできないの？」
「いや、そういう意味じゃない。そんなこと言ってないよ。」
彼女はプリプリ怒って黙り込んでしまった。参ったな。説明のしようがない。

「神井くんなんかより、私の方がずっと親しいのに。」
彼女は怒ってブツブツ言った。なんだよ。それって、俺の彼女としてどうよ？かなり無神経な台詞だと思わないか？
「だったら、勝手にすれば。」
俺は精一杯の捨て台詞をボソボソつぶやいた。彼女に聞こえないような小声で。